民俗学と民族学の違いとは?2つの学問をわかりやすく解説

豆知識

「民俗学と民族学って何が違うの?」この疑問を持ったことがある方は意外と多いはずです。

読み方は同じでも、研究する対象も方法も全く違う2つの学問。混同しがちな両者の特徴を整理して、スッキリと理解できるように解説していきます。

民俗学と民族学の違いを簡単に整理

混同しやすい民俗学と民族学ですが、実はそれぞれに明確な特徴があります。ここでは、まず大まかな違いを整理して、全体の構図を把握してみましょう。詳しい内容は後の章で解説していきます。

読み方は同じでも意味は異なる

「民俗学」と「民族学」は、どちらも「みんぞくがく」と読みますが、実はまったく違う学問なんです。

どちらも文化や人々の暮らしを扱うという点では共通していますが、研究の視点や対象、方法、そして成り立ちはそれぞれ大きく異なります。

それぞれの学問が持つ基本的な特徴

民俗学は自分たちの文化を内側から見つめる学問、民族学は他の文化を外側から観察して比較する学問です。この違いを押さえるだけでも、両者の特徴がよく見えてきます。

民俗学の特徴とは

まずは「民俗学」から詳しく見ていきましょう。私たちの身近にある文化を扱う民俗学には、どのような特徴があるのでしょうか。研究対象や調査方法、そして日本での成り立ちについて整理してみます。

暮らしに根ざした文化を対象とする

民俗学は、日本の各地に根づく風習や行事、昔から語り継がれている話などを研究対象とする学問です。

お正月やお盆といった年中行事、地元のお祭りや昔話、妖怪、昔ながらの道具など、私たちの身近な文化を記録して、その意味を読み解いていきます。

内側からの視点を重視

調査する対象と研究者が同じ文化圏にいることが多く、「外から分析する」というよりは、「内側から理解する」という姿勢が大切にされています。

実際の調査では、お年寄りから話を聞いたり、写真で記録したり、昔話を集めたりといったことが行われています。

日本で生まれた学問のひとつ

民俗学は、日本の学者・柳田國男が「普通の人々の文化」を記録するという考えのもとで作り上げた学問です。

文字に残っていない言い伝えや生活の知恵を丁寧に拾い上げて、次の世代へと受け継いでいくことが目的の一つといえます。

民族学の特徴とは

続いて「民族学」について見ていきましょう。民俗学とは対照的に、世界の多様な文化を扱うこの学問は、どのような特徴を持っているのでしょうか。その研究スタイルや歴史的背景を探ってみます。

世界の多様な文化を比較する学問

民族学は、世界中の文化や社会を比較して研究する学問です。

アフリカの村、南米の儀式、東南アジアの宗教など、自分が属していない文化を調査対象として、人間の文化がいかに多様であるかを探っていきます。

現地に入り込む参与観察を重視

民族学では、現地の人々と一緒に生活しながら観察・記録を行う「参与観察」が調査の基本になります。その土地の言葉を覚えて、暮らしに入り込みながら文化の仕組みや意味を理解しようとします。

欧米発祥の文化人類学がベース

民族学は19世紀のヨーロッパで発展した文化人類学がもとになっています。他の人たちの文化を客観的に記録して、比較を通じて「人間とは何か」を問い直す学問といえるでしょう。

民俗学と民族学の違いを比較

ここまでそれぞれの特徴を見てきましたが、改めて両者の違いを整理してみましょう。表面的には似ている2つの学問ですが、研究の進め方や視点には明確な違いがあります。

視点や対象、方法における主な違い

民俗学と民族学の主な違いは、何を研究するか、どんな視点で見るか、どうやって調査するかという点にあります。

民俗学は、日本などの自分たちの文化を内側から見つめる姿勢が基本です。対象は地域の風習や言い伝えで、お年寄りから話を聞いたり写真で記録したりして調査を進めます。

これに対して、民族学は違う文化を外側から観察して、比較を通して共通点や違いを明らかにすることが目的です。現地の人たちと一緒に生活したり長期間滞在したりするのが基本的な手法で、対象は宗教や社会の仕組み、儀式、親族関係など幅広い分野にわたります。

研究手法の違いから見える学問の特徴

どちらの学問も文化を扱いますが、立場や見方の違いによって、研究の進め方も変わってきます。そのため、似ているようでいて、学問としての性格はまったく違うものになるんです。

まとめ

今回のように、民俗学と民族学の大まかな違いを押さえておくだけでも、文化をどう見るか、どんな視点を持っているかがはっきりしてきます。

この記事を読んで、もっと詳しく知りたいと思った方は、民俗学なら柳田國男の本、民族学なら文化人類学の入門書などから始めてみるのもいいでしょう。

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