日本三大曳山祭とは?祇園祭・高山祭・秩父夜祭を徹底解説

豆知識

日本各地には、地域の伝統と誇りを受け継ぐ「曳山祭」があります。読み方は「ひきやままつり」です。

なかでも特に名高いのが、「日本三大曳山祭」と呼ばれる三つの祭りです。それぞれに長い歴史と独自の文化があり、今も多くの人々を魅了し続けています。

この記事では、日本三大曳山祭の由来や山車の特徴、見どころ、開催時期やアクセス情報を詳しくご紹介します。

日本三大曳山祭とは

曳山祭とは、車輪の付いた山車(だし)を人の力で町中に曳き出して巡行するお祭りのことです。その多くは神社の例大祭として行われ、五穀豊穣や疫病除け、商売繁盛を願う信仰行事として、地域に深く根ざしています。

全国には数多くの曳山祭がありますが、とくに「日本三大曳山祭」とされるのが、以下の三つです。

  • 京都府の祇園祭(ぎおんまつり)
  • 岐阜県の高山祭(たかやままつり)
  • 埼玉県の秩父夜祭(ちちぶよまつり)

いずれも国の重要無形民俗文化財に指定されており、2016年にはユネスコ無形文化遺産「山・鉾・屋台行事」のひとつとして登録されています。

次の章からは、それぞれの祭りについて解説していきます。

祇園祭(京都府)

祇園祭は、京都の夏を彩る一大行事として全国的にも知られています。長い歴史をもち、山鉾の豪華さでも有名ですが、その背景にある信仰や伝統にも注目してみましょう。

起源と歴史

祇園祭は、京都市東山区の八坂神社で行われる、日本を代表する大祭のひとつです。その歴史は平安時代・869年にまでさかのぼります。

当時、疫病の流行を鎮めるために行われた「御霊会(ごりょうえ)」が起源とされています。以来、祇園の町とともに千年以上続く祭りとして、京都の夏を象徴する存在となっています。

山鉾の構造と種類

祇園祭では、曳山のことを「山鉾(やまほこ)」と呼びます。長刀鉾や月鉾、函谷鉾など、巨大な鉾が京都市内を練り歩く姿は壮観です。

山鉾には「鉾(ほこ)」と「山(やま)」があり、鉾は高い屋根と長い鉾を立てた華やかなもの、山は神話や歴史を題材にした人形を載せたやや小ぶりな形式です。

見どころと見学ポイント

最大の見どころは7月17日と24日に行われる「山鉾巡行」です。鉾町と呼ばれる町ごとに装飾された山鉾が、伝統的な囃子の音にあわせて巡行する様子は圧巻です。

前夜祭にあたる「宵山(よいやま)」では、山鉾の展示や町家の特別公開もあり、夕涼みとともに風情を楽しめます。

高山祭(岐阜県)

次にご紹介するのは、飛騨の小京都とも呼ばれる高山市で行われる高山祭です。春と秋に開催され、からくり人形をのせた山車が市街地を巡行する姿は、多くの観光客を魅了しています。

祭りの成り立ちと概要

高山祭は、岐阜県高山市で春(4月)と秋(10月)の年2回開催される祭りです。

春の「山王祭」は日枝神社、秋の「八幡祭」は桜山八幡宮の例祭として行われています。その歴史は17世紀にさかのぼるといわれ、飛騨の匠と呼ばれる職人たちの技術が活かされた屋台が特徴です。

屋台の構造とからくり人形

高山祭の山車は「屋台(やたい)」と呼ばれ、江戸時代の工芸技術の粋が詰まった芸術品です。

漆塗り、金箔、彫刻、織物などが贅沢に使われており、からくり人形による演舞が人気の演目になっています。屋台蔵に保管されている屋台が年に数日だけ公開されるのも見どころです。

見どころと祭りの魅力

昼の巡行はもちろん、夜祭の「夜の曳き揃え」では、屋台が提灯に照らされ幻想的な光景をつくり出します。

高山の古い町並みとの調和も美しく、和の美意識が凝縮されたような空間が広がります。春は桜、秋は紅葉と、季節の風景も祭りに彩りを加えています。

秩父夜祭(埼玉県)

冬の澄んだ空気の中で行われる秩父夜祭は、三大曳山祭の中でも独特の雰囲気を持つ祭りです。勇壮な曳山と花火が織りなす幻想的な景色を楽しみながら、その歴史と特徴に迫っていきましょう。

歴史と祭りの由来

秩父夜祭は、埼玉県秩父市にある秩父神社の例大祭で、毎年12月初旬に開催されます。その起源は江戸時代中期ともいわれ、もともとは織物の市と深く関わっていた祭りです。

商業の繁栄と町の守護を祈る行事として、人々に親しまれてきました。冬の冷たい空気の中で行われる勇壮な曳山行事は、秩父の風物詩ともなっています。

山車の特徴と夜の輝き

秩父夜祭の山車は「屋台」「笠鉾」と呼ばれ、全体が精巧な木彫りと金具で装飾され、豪華絢爛な作りです。

最大級のものでは高さが7メートルを超え、これが急坂を登る「団子坂の曳き上げ」は見逃せないクライマックスです。夜になると数百もの提灯に灯が入り、まるで光の彫刻のように輝きます。

花火と曳山の競演

秩父夜祭のもうひとつの魅力は、夜空を彩る冬の花火です。曳山と花火が同時に楽しめる祭りは全国的にも珍しく、その幻想的な光景を目当てに多くの観光客が訪れます。

真冬の夜、吐く息が白くなるなか、灯りに包まれる山車と空に咲く花火の競演は、どこか神秘的で幻想的なひとときを演出します。

日本三大曳山祭 それぞれの魅力とは

三大曳山祭は、いずれも「山車を曳く」という共通点がある一方で、それぞれに異なる季節感や地域性、宗教的背景が見られます。

祇園祭は夏、高山祭は春と秋、秩父夜祭は冬と、四季折々の魅力が詰まっています。

また、山鉾・屋台・笠鉾といった山車の造形も異なり、京都は雅な絢爛さ、高山は匠の技、秩父は力強い美しさが際立っています。

演出方法にも違いがあり、高山ではからくり人形、秩父では曳き上げの勇壮さ、祇園では町をあげた大規模な巡行など、それぞれの見せ場があります。

つまり、三つの祭りには共通する“曳山”文化を基盤としながらも、土地の風土と歴史に根ざした“個性”がくっきりと表れているのです。

これらを比べてみることで、日本各地に息づく祭礼の奥深さを体感できるのではないでしょうか。

いつどこで開催?アクセス情報まとめ

実際に三大曳山祭を訪れたいと思った方のために、それぞれの祭りが行われる場所や時期、アクセス方法をまとめました。旅の計画づくりに役立ててください。

  • 祇園祭(京都府京都市)
    開催時期:7月1日〜31日(山鉾巡行は17日・24日)
    最寄駅:阪急「京都河原町駅」または京阪「祇園四条駅」から徒歩圏内
  • 高山祭(岐阜県高山市)
    春:4月14日〜15日(日枝神社)、秋:10月9日〜10日(桜山八幡宮)
    最寄駅:JR「高山駅」から徒歩15分前後
  • 秩父夜祭(埼玉県秩父市)
    開催時期:12月2日〜3日(3日がクライマックス)
    最寄駅:西武秩父線「西武秩父駅」または秩父鉄道「秩父駅」から徒歩圏内

おわりに

日本三大曳山祭は、単なる観光イベントではなく、地域の人々が守り伝えてきた文化遺産です。

豪華な山車や華やかな演出に目を奪われがちですが、その背景には、五穀豊穣や疫病除け、商売繁盛を祈る素朴で力強い信仰の心があります。

それぞれの祭りには異なる魅力と歴史があり、日本の四季や地域の多様性を映し出す鏡のようでもあります。もし機会があれば、実際にその地を訪れ、目の前で曳山が進む音や熱気を体感してみてください。

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